今年のテレビ朝日新人シナリオ大賞ではテーマが絞られました。
ちょっと前の記事でも書きました。
具体的には今年はテーマが「恋愛」に絞られましたね。(内訳は初恋、最後の恋、その両方)
テレ朝「テーマは恋愛です。さぁ書きなさい!!」
そう言われてそれだけの材料で書ける人は紛れもなく天才なんだと思います。
ここでテレ朝の言うテーマってのは大まかに分けられたジャンルの一つってだけで、
決してシナリオを書き始める前に考えなくてはならない「アイデア」の橋渡しだったり道標になるものではないんですよね。
そんなだだっ広いテーマ、「恋愛」の中から見つける「アイデア」。
これが大事。
局が新人に何を求めているか、何を期待しているか、
「アイデア力」
僕はそう思っています。
力のある脚本家なら業界にはいくらでもいるし、それこそ何十年も脚本家でヒット作を生み出してきたプロはすごい力を持っています。
それでも公募するってのは新たな才能≒新たなアイデアを募っているわけですよね。
総評なんかで書かれている爆発力や意外性、キラリと光る何かみたいなそんなワードからも評価点は技術よりアイデアなんだなってのが伺えます。もちろん最低限の技術は必要ですよ?
僕なんかは特にアイデアで勝負しなきゃ勝算がありませんからね、もう必死に考えるわけです。
今回の記事を書こうと思ったわけなんですけど、
実は今回のテレビ朝日新人シナリオ大賞、自分の中ではコレだっ!って案が一つあってプロットを練っている最中だったんですよね。
でもね、これで良いのかなって思ったんです。
今回僕が書こうとしている案は、
イノベーションは「既存のもの」と「既存のもの」との組み合わせで生まれる。
大学で学んだこの知識をそのままシナリオに流用して生み出した案だったんですよね。
「組み合わせ」を重視したアイデアだったんです。
誰も思いつかないような斬新なシチュエーションに力を入れたんです。
ぱっと見の設定で審査員の度肝を抜くってやつ。
でもね、
こんなこと誰だってやります
悲しいことに斬新アイデアの発掘なんて初学者であればあるほど一番にやることです。
この方法だけじゃ「唯一無二と見せかけたただの量産品」が生まれてしまうでしょう。
大賞なんて取れるはずがない。
だからよりアイデアを掘り下げて考えてみたのが今日の記事になったわけです。
今回のテレ朝のテーマは「恋愛」。
改めてまずはその恋愛についてまぁ考えてみるわけです。
恋愛とは……恋愛、恋愛……
恋愛の話……。
出てこねぇ!
全く出てこない。
こういう時はいつも通り過去の思い出に耽ってみる。
うん、恋愛はある程度してきたはず。ただどれもドラマ的ではない。
脚色してみても……
だめか。
そして気づく。
有り触れた「恋愛」というジャンルだからこそ難しいテーマだということに。
考えてみれば非凡な「恋愛」をしてきた人の方が珍しい世の中です。
名作「ロミオ&ジュリエット」なんてそもそも存在自体がほぼ奇跡みたいなもの。(創作だけど)
考えれば考えるほど経験の有無は関係ないんだということを悟る。
そして一つの結論に至る。
「恋愛」というテーマがそもそもシチュエーションどうこうではない。
デスノートのような
「ノートに人名を書いたら人は死ぬ」
そんなひと目で分かるワクワクシチュエーション話を考えている時点で素敵アイデアなんか出るはずがなかったんですよね。
ゴリ押しでそんなワクワクを恋愛に昇華するのもアリだと思うけどね。浮かべば。
ぶっ飛んだ物を書けば良いかというと決してそうでもない。
恋愛というテーマなら特にそうなんじゃないかなぁ。
無理矢理ぶっ飛んだものを書いても共感性は生まれ難いから当たり前といえば当たり前なこと。
恋愛ドラマにおいて共感性がなければそこに感情移入はなくなるし、そもそもキャラクターが成り立つかどうか……
こうなってしまうと本末転倒なわけで。ドラマとしての体さえも失ってしまう。
現実と虚構が絶妙なさじ加減で混ざり合うのがドラマ。
現実が平凡なのだとしたら虚構は非凡ってことになります。
これらを踏まえると脚本家がアイデアを探す時に見つけるべくはいつだって必然的に「平凡の中にある非凡」ということにになるんです。
でもね、「恋愛」そのもの(共感性のある要素)がほぼ全て「平凡」のそれなんですよ。
「平凡(恋愛)」の中から「非凡」を見つけなければならない。
だから今回のテレビ朝日新人シナリオ大賞は、
「恋愛から非凡を見出していけ」
そういう課題をオブラートに包んで脚本家志望の人たちに出してきた不思議なコンクールなんだと僕は思っています。
勝手な解釈ですが、ぶっ飛んだ物が見たいならむしろテーマは絞らない方がいいわけで。他の要素を求めているってことなのかな?と考えました。
まぁなんやかんや行ったり来たりして、過程はここに書くと長くなるので結果だけ書きます!
今回のコンクールに求められる「平凡の中の非凡」、
それは
「キャラクター性」
これです!アイデアをぶち込んで面白くするなら最初は絶対ここ。
ドラマを面白くするのはキャラクター。シナリオ指南書に何度も出てきそうな言葉ですよね。
皮肉ですけどまさにこれこそがすっごく平凡な答えです。
でも盲点だと思う。
僕がそうであったように、脚本家志望の人ってシチュエーションに頼りがちなんですよ。
実際そういう作品が受賞しているのも多いですし、目が肥えて曇っちゃってるんです。
でも今回は恋愛という平凡なテーマだからこそ、キャラクターを中心に考えるとより良い感じがしますね。
例えば、
恋愛の中の男女間の「温度差」とか「認識の違い」とか、そういう部分を全面的にキャラクターに載せて脚色して書く。
性格という個性に作品のメッセージ(テーマ)を載せるわけです。
キャラクター主導って言うのかな。
こうやってキャラクターを中心に書いていく。
応用するなら、これに最初に話したイノベーションを生み出す方法、
アイデア&アイデアというシチュエーションをバックボーンに重ねていくとかを載せてみると更に良いですね。
難しいですけど。
何だか面白いものが書けそうじゃないですか!?!?
というわけで改めてプロットを考え直してみます!!
※誤解がないように。
作品をコンクールに寄せるような記事を書きましたが何も「無理して寄せて自分の作品や作風を捨てることはない」というのが僕の考えです。
こう思うからこんな作品が書きたい。これが面白くなる!
そう心から思って書くのが脚本家にとって一番だと思っています。
僕は今回テーマを絞られたことが逆にきっかけとなって、
恋愛ものなら「キャラクター性」をより重視したら面白そう!と強く思ってこうやって実際に書いているだけなんです。
脚本業界は「個性」が大事であろう世界ですからね。
左右するしないされるされないもまた一考。
いつだって自分を持ってこ!
流されて自分を失った時がそれこそ脚本家生命の終わりです。
だから今回の記事は、そうですね……、
アイデアの風呂敷の広げ方くらいに捉えてください。