思い出

今日は誕生日。脚本家という小さな夢が生まれた日

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寝て起きて、気づけば3月22日。

何のことはない。

僕の誕生日である。


 

また一つ、歳をとってしまった。

おじさんへの片道切符。

乗ってしまったら最後、降りることはできない。

まだまだ若いなんて言ってられないね。

快速急行「脚本家」行、早く辿り着いてくれえええ!!

なんて頭ん中で想いながら、寝起きにボーッとネットニュースを読む。

ほうほう。

「イチローが引退ね、ふーん」

 

 

イチローが引退!?!?

 

野球のことはパワプロ(ゲーム)で覚えたルールくらいしか知らない僕だけど、

そんな僕でもイチロー選手は知っている。

いや、僕だけじゃない。

日本人なら誰もが知っているであろう野球界のスターが引退。

(記事を読んで)現役生活28年かぁ。

僕が生まれる前にはバッターボックスに立っていたということになる。

 

すごい

 

28年も全力でやっていれば見える世界が全然違うんだろうなぁ。

種類は違うけど、3年間全力で脚本家志望をやってきた僕でさえ前とは見てる景色が違うんだからね。

28年はもうさ、達観とかそういう次元の話じゃないんだろうね。

 

イチロー選手の記者会見の名言を読んでると、涙が出そうになる。

 

子供たちへ。

「自分が夢中になれるものを見つけてほしい」

「それが見つかれば自分の前に立ちはだかる壁にもぶつかっていける。色んなことにトライして、向くか向かないかよりも好きなことを見つけてほしい」

byイチロー(引退記者会見より)

 

ふろゆ
い、イチロオオオオオオ!!!!!

 

男はいつまで経っても子供、いや糞ガキのままである。

これは真理。

それでも大人に見えるのは大人のフリが上手いだけだ。

何が言いたいかと言うと、

 

イチローのセリフは大人(仮)の僕の心にもクリティカルヒットした

 

夢中になれるもの。

僕の場合はそれが「脚本」だった。

脚本というか、ドラマそのもの。

もっと言えば完成形と、その過程。

見ることが好きってよりは「良いものを追求していくこと」が好き。

ドラマが好きで脚本を書き始めたって人とは違うことが持ち味であり不安要素でもある。

この夢に出会っていなかったと思うと、きっと乾いた毎日を送っていたんだろうな。

 

……。

 

大学に入った頃の夢は「皆がオォーッと唸る仕事に就くこと」だった。

自己顕示欲の塊。承認欲求?うーん……。どっちも、かな。

当時の僕にとって仕事は「肩書」でそれ以上でもそれ以下でもなかった。

就いた仕事のカースト。

そのステータスこそが他者との違いを明確に決定づけるもの。自分を高めるものだと本気で思っていた。

大学生の頃は、仕事内容も全く知らないのに税理士になった自分はさぞ格好良いんだろうと、それだけの動機で簿記を勉強していたっけ。笑

そんな僕が大学のとき所属していた演劇サークルで、「脚本家」という仕事の可能性に出会った。

これが衝撃の出会いだったね。

人生で初めて感じた「やりがい」ってやつとの出会い。

自分が書いた脚本、監督や演出をした作品の舞台公演の時は、

全身に鳥肌が立って体中に電撃が走ったし、瞳孔はカッと見開かれていた。

役者たちの良い演技、裏方の的確な演出、そして作品に見入っている観客たち。

その全てに感動をしていた。

「今この瞬間を記憶しろ記憶しろ記憶しろ」って脳から命令が途切れることなく流れていた。

取り立てて自分の脚本が絶賛された時の喜びは、

生きるってこういうことなのか。と、誇張なしに初めて思った。

イチロー選手も言っているけど、向いてるとか向いてないとか、そういう話じゃないんだよね。

「観てくれた人を笑顔にできる面白い物を作る」、それだけにただただ夢中になっていたんだよ。

以降はひたすら卒業まで進路に悩む日々だった。

仮にも夢だった税理士になるべく税理士事務所に内定は貰っていたんだよ。

でも内定先に行くか行かないか、直前まで悩んだね。

大学4年の冬くらいまで悩んでた。自分はどっちだ?って。

結局、自分じゃ決めきれなくて、「税理士」になることを応援してくれていたゼミの先生と飲みに行って、相談した。

ありのままを話した。

今までの人生も含めてまるっと全部。

養子で育った僕にとって、進路に関してはゼミの先生は「親以上の存在」だったんだと思う。

 

ふろゆ「今の内定を蹴って脚本家になりたいと本気で思っています」

ゼミの先生「お前が追っている青い鳥はどっちだ?」

ふろゆ「分かりません」

ゼミの先生「じゃあまずは捕まえてみろ」

先生の言っていたことの真意は今でも分からない。

でもそれを言われて涙が止まらくなったのは覚えている。

今思うとどっちとも取れるセリフだなって思うけど、当時の僕は背中を押された感じがした。

その年、大学一のガリ勉たちが揃う僕のいたゼミは、

毎年当たり前であった「内定率100%」を達成することが出来なかった。

 

先生のキャリアに泥を塗ってから、あれから3年が経過した。

先生、青い鳥はまだ飛んでるよ。

でも、もうすぐ捕まえられる気がする。手を伸ばせば、届きそう。

あの時の決断が正しかったかは今も分からない。

けれど、今も青い鳥の下を走り続けることが出来てる。目に映っている。

それだけは間違いない。

プロの脚本家になったら真っ先にお礼を言いに行きたい、一人の恩師である。

 

高い奨学金を借りて、大学まで出たのにね。

学内一のガリ勉ゼミに入って、大学生なのにバイトをする時間もないくらいに勉強漬けの毎日を送った。

その結果が皮肉にもバイトの毎日で職歴は真っ白って言うね。

それでも悔いはないってのが不思議だったりする。

でも、税理士を目指してあのまま進んでいたら、今頃どうなっていたのかなぁ。

なんて、時々思う。

 

 

……。

 

 

養子先で殴られ蹴られ育ち、都合の良いように政略的に実父の家系に籍を戻されたものの、そこにも僕の居場所はなし。

そんな人生だったからか、見える景色が全て灰色に見えていた僕。

小さい頃から「この人生を生きる意味」を常に考えていた。

裏返せば「死ぬことばかり」を考えていた。

そんな僕が脚本家として「生きる」可能性と出会った。

あの日から少しずつ色づき始めた僕の人生。

きっとあの日が僕の本当の誕生日だったのかなって思う。

何日だったかは覚えていないんだけど……。

だから今日言う。

 

はっぴぃばーすでぃ俺

 

 

今日を良き日に。

いや、今年は素敵な年になると良いな。

今日は美味しいものでも食べに行こう。晩ごはんは「いきなりステーキ」に決定!

 

イチロー選手はお疲れさまでした。

イチロー選手の持っていたバトンは確実に引き継がれています。

僕にも。他の多くの人たちにも。

 

頑張ろうね、頑張ろう。

 


 

 

当時の進路の選択に悔いはないけれど、生きているだけでお金がかかるのは悲しきかな事実。

奨学金も返さねばならない。

それに、いつまでも「脚本家志望」を称してバイト戦士をやっているわけにもいかない。

というわけで、今は学生以来の就職活動を行っていたりする。

経理や事務、税理士事務所といった自分の技能に合った職に応募を続けてる。

面接では当たり前だけど、空白期間の3年間を聞かれることが"とっても"多い。

ふろゆ「3年間、脚本家を目指して頑張っていました。あとバイトもしてました!」

面接官「趣味は?」

ふろゆ「書くこと(ブログ含め)です!」

って言うんだけどね。ウケが相当に悪い。

ま、そうだよな……。

 

面接官「脚本家の夢、諦めてくれるなら(採用)考えるよ」

ふろゆ「はい!諦めます!」

 

なんて、泣きたくなるようなことを直接言わされることだってある。

これ言って不採用通知が届くんだからね。

面接官、鬼か何かの生まれ変わりですか?

嘘をついた僕が見透かされただけか。鬼だけど、有能ね。

学生時代は割とすぐ内定を貰えたから正直ナメてた節はあったけど、

就職活動、厳しいなー

と、改めて思う。

高望みはしていない(ハズ)。

本音を言えば脚本に関係ある仕事に就きたいけれど。

「事務なら何でも良い」は言い過ぎだけど、割とそれくらいの大雑把な基準で探してる。

(こだわりがないから逆に駄目なのかもしれないけど)

空白の3年間ってそういう評価だよね。

僕の中では人生史上最高に充実した3年間だったんだけどさ!

空白なんてないよ。プロの絵画顔負けのキャンバスだよ!

本音はこう。

これが自己評価と他己評価のギャップってやつ?

残酷過ぎるね!

 

こうなることを覚悟した上で行った決断だからね、仕方がない。

甘じて受け入れて就職活動を頑張っております。

脚本家を目指す道も、社会人として生きていく道も、どっちも厳しいんだろうね。

それが現実。

だから僕は社会人をやっている人は全員、心から尊敬しております。

 

ふろゆ
僕も定職に就きたい。雇ってください

 

……僕が夢を諦めることはきっとないと思う。

コンクールに落ちて落ち込むことはあるけどさ。

この先、仮に定職に就けてもなんだかんだで脚本家を目指していそう。

向く向かないじゃないんだよね。

それを決めるのは他人じゃないとも思ってる。

夢を追いかけている人を見て、

「向いてるよねー」

「向いてないよねー」

って評価気味に外野から言う人がいるけどさ、

真に「夢」を持ったことがない人だからそんなことを簡単に言えるんだよ。

夢に向かって走ってるから生きていけてる人だっているんだよ。

 

「向いてないからってまたあの灰色の日々に戻れって言うのは酷じゃないですか?」

 

 

僕が言われた訳じゃないんだけれども。

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