雑記 脚本の技術

第20回テレ朝新人シナリオ大賞お疲れさまでした。-テーマ「サスペンス」を今一度考える-

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第20回テレビ朝日新人シナリオ大賞、お疲れさまでした!!

 

もう、ほんっとうに皆さんお疲れさまでした!

 

僕もね、無事に出せましたよ。

 

結局締切のギリギリまで推敲をしてしまい、僕は郵送でした。(23時50分発)

なんか色々とハプニングが起こってパニックでA4サイズプリントで出してしまったという悲しみ辛みはあるけども、

 

一応(無事?)出せたっ!

 

(画像はテレビ朝日新人シナリオ大賞HPより)

この書き方なら用紙指定B5じゃなく、書式指定B5。

そう考えちゃっても良いよね!(無理矢理)

ま、原稿は読めれば良いと思いますよ。多分。

テレ朝の審査員方々の優しさとシナリオの中身を信じたいと思います。

が、がんばえー!

 


 

 

さて、波乱の「サスペンス劇場」が終わりましたね。

皆さんは如何だったでしょうか?

僕は締切1週間前に急遽シナリオの路線を変更し、全く別のテイストで仕上げました。

こういうことが多々あるからね。

どれだけ期間に余裕を持ってシナリオを書いていたとしても、

 

時間ギリギリになることは避けられない。

 

諦めの悪い人間にはあるあるなことなんです(2敗目)。

さて、今回のギリギリ事件を巻き起こした路線変更。

僕は、

「殺人事件が起こったその犯人(と動機)」

というオーソドックスなサスペンスから、

 

「恋愛もの」に書き換えました。

 

作品を読んでいただいた人たちからの第一声は揃って、

 

これ、サスペンスじゃなくね??

 

です。苦笑

 

そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。

 

今日はそんなお話をしたいなぁ、と。

 


 

 

サスペンスとは何ぞや?

 

テレ朝シナリオの今年のテーマ、サスペンス。

前回の記事でも書きましたが、テーマ「サスペンス」は一体どんな作品のことを言っていたのでしょうか?

僕は今回のテーマ「サスペンス」ではテーマの見方や捉え方が3つあったように思えます。

他にもまだあるのかな?

締切が過ぎて一段落したんで、僕なりの考察を書いていきたいと思いますね。

 

 

昨年のテレ朝シナコンのテーマは「初恋or最後の恋」でした。

これは簡単でしたね。

作品の中にそんな要素を詰め込めば良かっただけですから。

淡い"初恋"の話でも良いし、"初恋"の人に会いに行く話でも良い。

最後の恋と決めて、誰かと付き合う話でも良いし、結果として最後の恋になってしまったという話でもokです。

 

第1のテーマの捉え方は、ズバリ「題材」です。

 

昨年は何をどうやっても「恋愛もの」に行き着いたかと思います。

そういう意味では特に何も考えることなく書き始めることが出来るテーマ指定でした。

さて、昨年の初恋と同様に「題材」としてテーマ「サスペンス」をシナリオに落とし込むと一体どうなるでしょうか?

 

サスペンスドラマを撮影するTV局員たちのドタバタコメディ。

サスペンスオタクとサスペンス俳優が出会うヒューマンドラマ。

最近主人公の周りで起こった奇っ怪な出来事が全部「サスペンス番組」と同じ流れだった。(世にも奇妙系)

 

ざっと今考えた設定ばかりで陳腐ですが、こんな感じになります。

昨年のテーマ通りに書くならこういうテイストになるはずですね。

テーマを一つの「題材」「要素」として見る感じです。

こういう見方があったのかー!

と思ったそこのあなた。

昨年のテレ朝は全く同じ方法で書いていたはずですよ?

でもこの書き方、テーマ「サスペンス」内だとちょっと異端に見えませんか?

なぜそう思ってしまったのかは、「次の第二の捉え方」が大きく影響を与えているはずなので、早速次のパターンを見ていきましょう。

 

第2のテーマの捉え方は、「っぽいドラマ」という見方です。

 

今回で言うと、サスペンスっぽいドラマというわけです。

昨年は「題材」や「要素」として書いたテーマでしたが、

今年は「っぽいドラマ」で書いた人が大多数を占めるのではないでしょうか?

それは、

 

殺人事件ドラマだったり、

刑事モノドラマだったり、

怪人やサイコが出てくるドラマだったり。

 

そんな感じの「いかにもサスペンスー!」という「っぽいドラマ」ですね。

昨日、数日後に控えている大事な約束のため、気合を入れに美容院に行ったんですよ。(オイ締切)

で、美容師さんに、

ふろゆ「サスペンスってどんな作品なんですかね?」

と、聞いてみたんです。

美容師さん「そりゃあ刑事モノや殺人事件があるやつなんじゃないっすかねぇ」

と言われました。

サスペンスで恋愛モノを書いていた僕は、心臓をナイフで抉られる気持ちでしたね。

まぁ、普通はこうなります。

一般で言うところのサスペンスのイメージは、まさにこういうドラマたちなんですよね。

僕もサスペンスって聞いたら「火曜サスペンス劇場」を思い出すもん。(一度も見たことないけれど)

だから「殺人事件」は要素として必須だと思っていたし、誰かの「命の危機」がないとサスペンスとは言えない。

そう数日前までは考え、まさにそんな作品を執筆しておりました。

でもさ、

「何でこれがサスペンスなの?」

という問いかけに、

「殺人事件があるから」「主人公が狙われるから」「サイコで狂った奴が色々やるから」

と、「~っぽいから」論を一脚本家(志望)として胸を張って語れますか?

言えませんよね。

さて、ではなぜこれらが一般的に「サスペンス」だと呼ばれているか。

それが「第3のテーマの捉え方」に繋がってくるのかなと思います。

 

第3のテーマの捉え方、それは「手法」です。

結論から話すと、僕は今回この捉え方で書くことにしました。

「~っぽい作品」を執筆途中、僕は「第2のテーマの捉え方」に自信をなくしてしまったんですよね。

それで、改めて調べてみたんです。

「サスペンスとは何ぞや?」と。

サスペンスの語源は「サスペンダー」からと言われております。

肩から回してズボンを上から吊るベルト、アレです。

あれの「着る人」がいない状態。

サスペンダー(suspender)のerを抜いたらサスペンスなわけです!

suspender→suspend≠suspense。あれ?

このベルトとズボンだけが存在している状態。

その(ズボンの)状態こそがまさにサスペンスなんだそうです。

ベルトに吊るされてブランブランと揺れている、そんな宙ぶらりん状態を視聴者のハラハラやドキドキに見立てたわけです。

ふむ、なるほど。このハラハラドキドキがサスペンスなのか。

では、

このハラハラ・ドキドキは一体なんなのだろう?

それが第3のテーマの捉え方の第一歩目です。

僕は自分なりに、このハラハラドキドキ成分から、

・主人公の今後の命運(命とは限らない)に対する心配

・一般人じゃ理解が出来ない(味わえない)不安や恐怖

・先の読めない展開(ワクワクは除く)

の3つを抽出しました。

この3つのハラハラドキドキ成分を物語の筋として据えて書く。

この「手法」こそがまさに「サスペンス」なんだ。そう思ったんですね。

だから、「殺人事件」や「命のやり取り」は必須でもないんです。

もちろん、それらを書いても間違いではないですよ。

僕の書いた「サスペンス3つの要素」がそれらにもきちんと入っているわけですからね。

でもさ、「~っぽさ」よりも「語源からきちんと考えて書いた」方が、僕としては一歩前進していると思ったんだよね。

志望とはいえ脚本家なら、「~っぽさ」という曖昧な土俵ではなく、きちんと理論立ててそこで書きたかった。

だから、たとえお門違いだと言われようが自分の考えで自信を持って勝負がしたいなぁと。

それで締切前で時間がないにも関わらず、急遽、書き換えたわけですね。

それも、

「いたって平和な恋愛もの」

という、あえて第2の捉え方とは真逆の畑で勝負をしてみることにしたんです。

(勿論3つの要素は含めました)

サスペンス、こんな捉え方があったのかー

と言う人も多いと思います。(2回目)

安心してください。

僕も1週間前までは第2の捉え方以外は「アリエネー、一次落ちっ!」と思っていた側の人間です。

そんなもんだと思いますし、審査員がそのような考え方だったなら「第1や第3の捉え方」は問答無用で落とされるでしょう。

これはあくまで僕個人の考えとして読んで欲しいのですが、

「第2の捉え方は、最も安易ではあるが、最も多くの人に(サスペンスとして)支持されるであろう書き方」

なのかなと思います。

 

……。

 

どうでしたか?

今日はテーマ「サスペンス」の捉え方3選を紹介しました。

第2のテーマの捉え方「~っぽさ」で書いた人がやっぱり一番多いのかな? と思います。

他にも度肝を抜かれるような、そんな別の視点があればコメント欄にでもぜひ教えて下さい。

(ここyoutubeっぽい)

 

今回の第20回テレビ朝日新人シナリオ大賞、上手いなぁと同時に意地悪だなぁと思ったのは、

 

(画像はテレビ朝日新人シナリオ大賞HPより)

 

"テーマの解釈は自由です。"

ってとこ。

これが最高に落とし穴だと思いましたね。

解釈の仕方は人それぞれ。

だから前回の記事でも書いた通り、極論、何でもokなんですよね。

自分がサスペンスって思ったら、そこでもう書いちゃえば良い。

「サスペンスって何?」な状態でもokなんです。

第2の捉え方で何となく書いた人は、自分ではサスペンスを分かっているつもりでも、蓋を開けてみると「何?」状態な人も多いような気がしますね。

僕が実際にそうでしたから。

ちなみに昨年をなぞるなら一つ目の捉え方「題材や要素」として「サスペンス」に挑むべきでした。

今年はこちらの方が異端側でしょうね。

(でもそれで書いた人もいると思うよ)

"テーマの解釈は自由"

この一文があったからこそ僕も攻めることが出来たんだと思います。

ちなみに僕はライバルたちの中では「第1の捉え方」や「第3の捉え方」で「サスペンス」を書いた人たちが特に怖いなと思っています。

そういう捻くれて尖った人たちはいつか絶対に上がってくるはずですから。

 

 

ただね、

 

「これはサスペンスじゃない」

 

そう僕の作品を読んでいただいた方々には指摘されてしまったわけですから、

 

カテゴリーエラーで落とされる。

 

それは覚悟しなくてはいけないポイントかとも思います。

そこが一番の賭けかな。

 

以下はちょっと偉そうな書き方になってしまうけれど、

(好意でサスペンスじゃないと言って頂いたはずなのに申し訳ないです)

共通認識として読者の方と共有したかったので書かせていただきます。

脚本家(志望)なら視野を広く持った方が良いと僕は思っています。

「サスペンスとは何ぞや?」

という問いに対して、今回3つの捉え方を書きました。

どれも正解なんだと自信を持って今なら言えます。

人の数だけ考え方は違います。

「サスペンス」というテーマへの解釈も多種多様。

でも、自分と違うからそこで否定ではなく、

「あ、そういう見方や考え方もあったんだ」と自分の引き出しに相手の思想さえも入れることが出来る。

そんな姿勢が大事なのかなーと思いました。

僕の作品を「サスペンスじゃない」と言う価値観に、僕もある程度は共感しないといけない。

そういうブーメランもまあ、あるんですけどね。(一次落ちは覚悟しなければ)

テレ朝「サスペンス」に挑んでみて、それが何よりの収穫でした!

 

いやー。

でも実際、落ちる可能性の方が高いな、こりゃ!

「第2のテーマの捉え方じゃないと通さねぇっ!!」

そんな下読みさんも中にはいるでしょうね。

 


 

下読みさんを不安に思うようなことを書いといてなんですけど、

第3の捉え方で抽出したハラハラドキドキ成分。

頭で理解は出来ていても僕がしっかり書けたかどうかは、

 

僕の実力次第

 

と言うね。結局はそこ。

プロットが良くても大事なのは中身なところがシナリオです。

だから一次落ちしたら、単に実力不足だったんだなぁと素直に受け取ることにします。

 

A4プリントの件は不問とす。

 



 

【感謝と懺悔と言い訳の間】

時間のない中、僕のシナリオを読んでいただいた方々、ありがとうございました。

「最終稿も読んでほしい」と言っておいて送れなかった方は本当にすみません!

出張疲れで寝てしまって、気づけば時間が全くありませんでしたっ!(滝汗)

でも、おかげさまで納得のいく作品を出すことが出来ました!

結果は(A4プリント事件、カテゴリーエラー判断、その他クオリティ諸々で)一次落ちかもしれませんが、

個人的にはとても満足しております!

 

ほんっっとうに、ありがとうございましたーーー!!

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