ビジュアルイメージ難しすぎません??
Hulu-U35クリエイターズチャレンジという公募の締切(5/9)があった。
受賞したら映像化。これはすごい。
更にこのコンクールでは何とその制作にも携われるらしい。
素晴らしい。
脚本以外の役割(監督や演出とか)を経験できる(かも)とのことで、
演劇サークル時代にどちらも楽しんでいた僕にとってはとても惹かれる魅力に溢れる公募だった。
逆にこの"脚本以外も携わる"ことが脚本一筋の人にとってはハードルが高かったのか、応募を諦めた人も何人かいた。
この手の応募辞退で毎度思うことだけど、
『難しいことは受賞して考えれば良くね??』
と思う。
コンクールはどれも倍率高いんだし、そもそも受賞出来るかもわからない。
数年やっていれば嫌でも分かるけど、コンクール受賞は低確率も低確率よ。
書ける人でもコンスタントにはいかないのがコンクール。
このコンクールでは一次審査に30人程度しか通らないって書かれていたよ。
恐らく1000↑は応募されるし、作品数で数えればもっと↑。
そんなんだから受賞後の身の振り方を考える必要は応募前にはないと思う。
むしろそこで悩むのは謙虚と見せかけて賞を取る前提で悩んでいるのだから傲慢なようにも思える。
仮に落ちるって思っているなら『出すだけタダ』と思って挑戦すればいい。
出さない理由を考えるより出す理由を考えた方が圧倒的に良いと僕は思う。
たとえば出した作品が選考を通った後、『次の選考結果が出るまでの2ヶ月間、次の選考に進むか考える期間があります』と言われて『辞退』を考えるかって言われたら、ないでしょ。
評価された喜びが勝っちゃうでしょ。
「僕、色々無理なんで^^;」とはならないでしょ。
少なくとも辺境の僕のブログを見てるようなシナリオ熱心な人たちはさ!
本気で目指しているなら脚本を認められた時、専門外でも勉強してそのチャンスを掴もうとするものだと思う。
ワンチャンスにしがみつきたくなるくらいプロは狭き門だもん。
つまり、受賞して後悔する確率なんてゼロに等しいんだから四の五の言わず積極的にぶつかっていけ!! ってこと。
まぁそんな綺麗事書いたけど、
Huluの募集要項を一読して第一に、【応募断念】が脳裏を過ぎった。
「自分のことは棚上げ」とはまさにこのこと。
断念を考えた理由は一つ。
応募書類の一つにビジュアルイメージというものが必須で入っていたからだ。
ビジュアルイメージとは……
写真やCG、イラストを使って作品の世界観やイメージを文字以外で表現できるもの。(Hulu応募企画書より)
『文字以外の表現』が求められる創作物の提出が求められていた。
脚本でならプロ相手でも勝負しにいこうという気になるが、この手の文字以外のものは全くの管轄外、僕にとっては魚に「空を飛べ」と言うような無理難題でもあった。
あー、無理だコレ。
……。
でも出してえなあ。
諦めきれなかった。
ホームページの審査員のメッセージを読んで心を燃やす。
具体的には、
『審査員のメッセージを全部自分に宛てられて書かれた手紙』
そう脳内変換する。
これだけ言われて書かないやつはいない。
ああ。そうだよな。待ってんだよ、業界が俺を!!
トビウオになぜ羽が生えているのか。
そう、
空を飛びたかったからだ
捕食されないためという通説をここで出すのはやめていただきたい。
俺はトビウオ。トビウオになる。
不出来なのは前提として、択はある。
CGは技術的にも時間的にも無理(勉強しても締切に間に合わない)。
でも写真なら僕でも撮れる。
iPhoneのカメラ機能を起動してボタンを押すだけ。猿でも可能。
これなら応募出来る。
友人たちに協力してもらってそれっぽいワンシーンの写真を撮るだけだ。
ではどこのシーンを撮影しようか。
早速作品の世界観やイメージを彷彿とさせられるシーンを考える。
……どうすんのこれ??
企画の世界観を写真にする。
意味不明だった。言っていることの意味が分からない。
ワンシーンだけを表現してもこの作品わかんねーよ。
何枚も載せるんじゃあまりにもお粗末。
もっと抽象的にしよう。
作品全体が分かるような抽象的な写真。
作品のシンボルを舞台に乗せて、主人公の考え方と対立思考とを背中合わせに……。
余計にわからなくなった。無理じゃね?
一度立ち止まって過去に書いた作品だったらどうするかを考えてみる。
……。
え?
無理。
写真でビジュアルイメージってそもそも何すればいいの?
ていうか冷静に考えて写真って何。写真写真写真……。
『写真ならビジュアルイメージは簡単』そう思った数分前の自分をぶん殴りたい。
簡単と思ったのは本当に一瞬だけだった。
僕の想像力が陳腐なのか。そもそも僕の考える企画がおかしいのか。
視点を変え、ヤンシナで大賞を受賞したサロガシーならどう表現するか考えてみた。
サロガシーは一定の評価を既に得ている作品だ。
この作品を軸に考えるのは信頼できるいいやり方だ。
サロガシーならまずお母さんの写真だよな。これは外せない。
で、同性愛者のお兄ちゃんも添えて、パートナーと、そうだ。赤ちゃんもいた方が良いな。同僚も入れちゃえ。
……って、
それサロガシーか??
僕は頭を抱えた。
作品の世界観を表現するために主要キャラクターを並べただけのものをビジュアルイメージと呼ぶのはあまりにもナンセンスだ。
皆さんは『ブロッコリー』を知っているだろうか。
日本でよくある映画ポスターのビジュアル表現を皮肉った言葉だ。
『映画 ブロッコリー』と検索エンジンで画像検索をかければブロッコリーと呼ばれるポスターが大量に出てくる。ぜひ調べてみてほしい。
僕の考える『写真でサロガシー』はまさにこれだった。
プロが一生懸命作ったものにこういうことを言うのは大変申し訳ないが、ブロッコリーをビジュアルイメージとしてHulu-U35に提出しても恐らく企画は通らないだろう。
これは思考停止した表現、つまり手抜きだからだ。
ビジュアルイメージという壁が目の前に高くそびえ立っていた。
ちなみに僕の理想的イメージは、
有名な映画「E.T」のポスターである。
これはビジュアルイメージとして最強だと思う。
月に自転車は有名なワンカット。これだけでも十分過ぎる。
しかし何と言ってもこのポスターの肝は真ん中の手なのである。
見ての通り人と宇宙人の指先が触れ合っている。
でも一本だけ。何なら一点だけだ。
これは本編を見てもらえば分かるのだが、『人類』と『宇宙人』の友情は本当に指先程度のものでしかないのだ。
何億人の一人。それを"指先程度"で表現している。
指先が光っているのは主人公のE.Tの『二人だけの世界。秘密』を示していると僕は考えている。
(映画を見ればこの光にはもうひとつ意味があることを知れるが)
それがこの作品の世界観。
『二人だけの世界。秘密』。こう考えると後ろの月に自転車は『二人だけの思い出』。
背景に描くべき最高のモチーフである。
真ん中の指先の表現が、背景のワンカットを切り抜き以上のものにしている。
本当にすごい。
ガチで考えられている。
あー、こういうの作りてえなあああ!!
が、
お前には無理
皆も同じことを思っただろう。
僕の自己評価と他人の自己評価が珍しく一致した瞬間である。
流石の僕もETのポスターを見れば見るほど自分の無力さに泣けてきた。
ブロッコリーが出てきた時点で僕はこの業界ではそっち側の人間なのである。
いつの間にか頭の中にはHuluに出さない言い訳が並べられていた。
人は弱い生き物だ。
神『ふろゆ、まだイラストを描くという択もあるよ』
天から声が聞こえてきた。
そうか。イラストか。
ありがとう神。でも……
この択を選ぶという選択肢は僕の中になかった。
僕のブログの長年の読者なら僕の画力は知っているだろう。
中学時代画伯と恐れられていた僕は、学期末の通知表でなんと「美術:2」を貰ったことがある。
5段階評定の下から2番目。
ちなみに「1」は赤点。つまり「2」は赤点ギリギリ。
「2」を貰うなんて初めての経験だった。
落胆よりまず「2」が存在していたことに驚いた。
都市伝説レベルの存在だと思っていたから。
ふざけて描いたわけでもない絵を隣に座る女子から爆笑された記憶が蘇る。
きっとあのときの絵が原因だ。あれのせいで「2」。
なんかムカムカしてきた。
むしろそいつが評定「2」だろ。
人の作品を笑うんじゃあない。教育者はまずそこを評価しろ。
世の中の教育指針に異議を唱えたくなったがグッと堪えた。今はイラストの是非について真剣に考える時。
あの頃から僕は間違っていない。
一生懸命やればいけるはずだ。
時代だって変わってきている。追い風だ。
画伯(笑)でもいけるかもしれん
企画を読み直して表現方法を考える。
作品の筋の中に共通項を見つけた。
これをモチーフにして展開していけばもっと面白くなりそう!
企画を練り直し、ビジュアルイメージの目処も無事に立つ。
E.Tには遠く及ばないが、ブロッコリーよりは百倍良い。
それに、これでいくなら写真より断然イラストだ。
描くべきビジュアルイメージの構図がバッチリ脳内に固まった。
あとは描くだけ。
……あれから十数年。
僕の美的感覚も当時に比べれば研ぎ澄まされているはず。
画用紙を取り出して描き始める。
……。
六時間ほどで完成。
すげえ。すげえよ。
やりきった。
これならいける。
我ながら完璧。
出来たものは、イメージした通りのビジュアルイメージだった。
早速、絵の描ける友人に企画と一緒にイラストを送る。
どうだ? これなら企画次第で通るだろ?
そりゃあんま上手くないけどさ。描けてるっしょ?
すると一言。
やべえ(笑)
やはり世の中の教育は間違っているようだった。
クソみたいな教育は僕の中学以外でもやはり行われていたのである。
日本は至急この問題に対応しろ。改革が必要である。
……。
結局、友人の助けを借りてビジュアルイメージは仕上がった。
おかげで絵について少し詳しくなった気がする。
まあそんなこんなで、山あり谷ありなHulu-U35クリエイターズチャレンジ。
何とか応募をすることが出来ました。ビジュアルイメージ辛すぎた。
パチパチパチパチー。
通ったら奇跡だと思ってる。でも希望は捨てていない。
企画内容はチャレンジングなもの。
せっかくのネット配信企画だから楽しまなくっちゃ!!
……世の美術教育が良い方向に進むことを願っています。