雑記 思い出

シングルベッドで夢と脚本抱いて寝た夜

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つんく♂さんといえばモーニング娘。

モーニング娘といえばつんく♂さん。

シャ乱Qもよく聞いたけど。

(なぜ急につんく♂さんを語り始めたかは前記事で)


 

つんく♂さん主宰のシナリオプロジェクトに応募した。

個人的にはめちゃくちゃ通って欲しい。

というのも、つんく♂さんに(僕が勝手に思っているだけであるが)、因縁があるからである。

今日はそんな僕の自分語り。

 

 

時は僕の覚えている二番目に古い記憶に遡る。

......

 

5歳の頃に養子となり引越した僕は、とある保育園に転入することとなった。

当時の僕は全く男の子らしくない性格で、いつも女の子と女の子らしくおままごとやかるたで遊ぶ幼気な少年だった。

お母さんっ子だった僕は、男の子と遊ぶより女の子と遊んでいた方がしっくりきたんだと思う。

そんな僕はチャンバラ合戦で遊ぶような男の子たちからはカマ野郎と呼ばれ、いじめっ子の格好の標的となった。

よだれを垂らしたデブの顔は今でも目に浮かぶ。

僕はそいつに毎日のように小突かれ、泣かされる日々を送った。

保育園に行きたくないと毎朝泣いた。

そのせいか思春期が訪れるまで、太っている人はそれだけで嫌いになった。

生理的に無理。というやつである。

生理的に、というものは大体に理由があるものである。

ちなみに高校生の頃クラスメートと焼き肉に行った際、野球部のデブが色んな肉が乗ったプレートを鉄板にまとめ入れ炒めもの料理と化した事件は僕のデブ嫌いを再燃させた。

今では太っている人に対して何とも思わないが、一緒に焼き肉には絶対に行かない。タンから焼け。

「子どものやることだから」と本質を見て見ぬ振りする先生は、泣いた僕をなだめるだけの保育をした。

そんな僕を地獄の底から救ってくれたのは、一緒におままごとで遊んでくれていた茜ちゃん(仮名)だった。

茜ちゃんは僕とデブの間に入り、デブを注意した。

ガオレンジャーもハリケンジャーも見なかった僕にとって、人生で初めて目にするヒーローだった。

それでもデブはいじめを止めなかった。

ああ。僕は一生デブにいじめられる。デブのストレスのはけ口としてこれからずっとサンドバッグとして生きていくんだ。

絶望で涙が止まらない。

まだ5歳だぞ。チクショウ。

何がどうなってんだ。

 

ドスッ

 

鈍い音が聞こえる。

『まさかあのデブ!茜ちゃんまで殴ったのか!!この野郎!!』

僕は泣くのを止め、渾身の力でデブを殴り飛ばした。不意をつかれたデブは泣きながら頭を垂れる。

『へへ。大丈夫か茜。もう大丈夫だぜ!』

僕と茜ちゃんはデブに軽蔑の眼差しを向け、おままごとを再開した。

……そうだったなら、どれだけ良かっただろう。

実際は茜ちゃんがやられたと分かっても、僕はひたすら泣き続けていた。

僕はドラマの主人公ではなく、無力で、ひ弱な、情けない子どもだった。

共鳴するかのように泣いている声が聞こえてくる。

いつもの聞き慣れた声。

そう、デブの声だ。デブの……

ッッデブ!?!?

涙ながらに目を開けて見たのは、泣き喚くデブと茜ちゃんの雄姿だった。

数年後知ることになるのだが、デブは茜ちゃんのことが好きだったらしい。

僕は目の敵にされていただけで、決してカマ野郎ではなかった。そういうことにしておく。

 

そんな茜ちゃんの親と僕の親は偶然仲が良かった。親の仲が良かったから僕たちも仲が良かったのかもしれないが。

だからか小学校に上がっても遊ぶ機会は多かった。

ある日、茜ちゃんから夢を聞いた。

『モーニング娘に入る』という夢だった。

小学生の頃から夢が決まっているなんてすごい。しかもモーニング娘。

でもそれくらいに茜ちゃんは美人で、年の割に大人びていた。

クリっとした目が特徴的で、何度も吸い込まれそうになった。

もちろん学校では人気者だった。

思春期になるまで恋心の『こ』の字も知らない僕だったが、自分にとって高嶺の花であることだけは当時の僕でも分かった。

そんな茜ちゃんと自宅で二人きりで遊んでいた僕は、今思えばすごく幸せ者だったのかもしれない。

日々ダンスと歌の練習をしている彼女を、僕は身近な存在としてずっと見ていた。

茜ちゃんは将来モーニング娘になるのだろう。

何の確証もないのに、漠然とそんな確信があった。

ある日、茜ちゃんは学校を転校した。

家が火事になったからで、原因はご近所さんの火の不始末とのこと。

たかが車で20分の距離の引越しだったが、小学生の僕にとっては地球の裏側に行ってしまったような気分だった。

会う機会は目に見えて減った。

その頃から茜ちゃんの親も本格的に娘のプロデュースを始めたらしく、茜ちゃんと会うのは週に1回が月に1回、年に1回と段々と減っていき、いつしかもう会うことはなくなった。

芸能活動(オーディションとか)は相当に忙しいようで、

僕の中の茜ちゃんは時と共に記憶から段々と薄れていった。

それから随分と時が流れた。

僕にも彼女が出来た。

彼女と一緒に受かろうと約束した受験に失敗して、人生史上最も苦い失恋も経験した。

自分のせいなのに神様を呪い、不良仲間と盛大なミスドパーティーを深夜の公園で決行しようとし補導もされた。

そんな人並みの青春を歩んだ。

高校2年の頃、親の繋がりから茜ちゃんと再会した。

茜ちゃんの可愛さは限界を突破していて、可愛すぎて無理。そんな女の子になっていた。

茜ちゃんは近況を話してくれ、AKBの選考でかなり良いところまでいっていると話してくれた。

自分のことのように嬉しかった。

『AKBスゲーじゃん』

『テレビ出てるよね!』

とかIQの低いことばかり言った気がする。

でも茜ちゃんは笑ってくれた。

数日後、茜ちゃんがAKBの選考を辞退した話を聞いた。

『やっぱりモーニング娘になりたい』

という理由からだった。

あのAKBを……と普通の人なら思うかもしれないが、昔から茜ちゃんを知っていた僕はその決断の方がむしろ自然で、あまり驚かなかった。

それから十数年。

音沙汰のない日々を過ごした。

 

僕の方は東京の大学に進学して、演劇サークルに入った。

クソバイトを転々とし、どれだけ変な客も神様と呼び崇めた。

オッパブという謎の職場で働く女の子と飲みにも行った。

 

田舎から上京した僕は人並み以上に自由を満喫した。

 

そんな大学生の頃、茜ちゃんがテレビに出るよ!と親から連絡が入った。

 

テレビをつけて番組を見る。

……。

茜ちゃんは九州を股に掛けるパチガールになっていた。

光り輝く画面を見ながらはしゃぐ茜ちゃん。

パチンコはしたことがないからルールは分からない。

でも茜ちゃんのことなら分かった。

僕はテレビの電源を切った。

 

それから僕の中の茜ちゃんの時は止まっている。

 

今、茜ちゃんが何をしているか分からない。

きっとネットで調べればすぐに分かるのだろう。が、調べるつもりはない。

叶うなら偶然再会出来たらな、と思う。

しかし僕は関東に来てしまった。奇跡でも起こらない限りもう会えないだろう。

でも今のこの距離感が僕と茜ちゃんにとっては丁度良い。そう思う。

 

今回のつんく♂さんのプロット募集。

もし僕が通ったら茜ちゃんの目に触れるかもしれない。と密かに期待している。

茜ちゃんは過去につんく♂さんと会っていると思う。

だから僕も会ってみたい。

茜ちゃんの弔い合戦と書くと傲慢に映るけど、茜ちゃんの分もつんく♂さんと関わって仕事をしたい。

雲の上の存在であるのはそうなのだが、決して無関係の人だとは思えないから。

色んな人の人生を変えるくらい影響力のある人に、僕は会いたい。

 

採用されたらいいな。

 

結果に期待はしないけど良いものが描けたと思ってる。

採用されてーなーって願望はめちゃくちゃある。

 

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