革命の時は来た。
最近、腰が辛い。
原因は分かっている。
作業中の姿勢だ。
座椅子に胡座をかいて、机に乗せたパソコンと向き合う。
これで執筆。
長いと10時間。酷いときだと20時間。
執筆外だとゲーム、映画鑑賞、書類作成、ブログ執筆。
家でパソコンを使う際は大体この姿勢である。
当然のように前傾となる。
理想的な姿勢のイメージが90度であるならば、僕の姿勢は60度くらい。
床(底面)と僕とで正三角形が作れると考えるとどれだけ異常なことをしていたか。
このスタイルをもう10年近く続けてきた。
駄目だ駄目だと思いつつ、若さにかまけてずっとこの姿勢で作業してきた。
椅子や机を買い替えるお金が勿体ない。
ずっと 【お金>健康】 の不等号が成り立っていた。
でも次第に辛くなってきた。
というか、もう辛い。
10年来の友人に相談したら、
お前まだ蛮族スタイルでやってんの??
そう揶揄された。
蛮族て……。僕はそんな風に見えているのか。
学生の頃から続くやせ我慢には限界があった。
というか、この歳で蛮族スタイルを貫き通している僕は、
令和を生きる大人としてどうなのかと自分で滑稽に思えてきた。
よし、文明人になろう。
手始めに椅子を買う。
予算は3万くらい。
せっかくの買い物だ。3万くらいの良いものを買おう。
ピロピロピロー。インターネットで調べる。
インターネットの擬音これで合ってる?
出た。
アーロンチェア、オカムラ、エルゴヒューマン。
どれも有名な椅子メーカーとのこと。
ハハ、全く知らないぜ……。
価格はどれも10万を有に超えていた。
俺の知らないものは無名だよ。だって知らないんだもの。byふろゆ
……。
椅子高すぎね??
10万や15万、さらに高いものだと20万超。
おすすめの椅子を調べると、そんな高級品ばかりが検索にヒットする。
椅子に10万……座るだけよ??
昨今のインターネットは収益化を意識したアフィリエイトサイトに溢れている。
特にことショッピングにおいてその傾向は顕著だ。
高い買い物をさせればそれだけバックが大きい。
つまり高い椅子を良いものだと宣伝することで、アフィリエイターは相応の日銭を稼げる。
椅子に10万。ありえない。
アーロンもオカムラもエルゴも、情弱の買い物にしか思えなかった。
俺は断じて養分にならんぞおおお!!
勢いよくブラウザを閉じた。
世の中変な方向に進んでいないか??
憤りを感じるぞ僕は。
……。
しかし現状、情報を得るにはインターネットに頼る他ない。
インターネットなしでは椅子界隈のことが全く分からん。
よし、
自分で見に行く
百聞は一見になんたら。
脚本家は足で取材せよ。
誰が言ったわけでもない言葉が頭の中をこだまする。
何でもネットで解決するのは悪い癖だ。
時にアナログに生きてみるのも大事だと僕は思う。
まず、近所にある『お値段以上』なお店を訪問することに決めた。
店の奥にはオフィスチェアのコーナー。
いざ、試座!!
……イイ
今まで蛮族スタイルでやってきた人間にとって、
『椅子に座る』
それだけで文明人としての喜びを感じることが出来た。
やっぱり椅子はいい。
腰への負担がかなり減る。
価格もお手頃2万5000円ちょいだ。
予算圏内。
見に来て良かった、これにしよう。ハハ。
……。
……。
アーロンチェアやオカムラ、エルゴヒューマンはどんなものなのだろうか。
既に満足度100パーセントなのに、10万を越えた椅子がスゴク気になり始めた。
あまりにも2万5000円が快適だったから……。
椅子に10万出すなんておかしい。
でも10万円を出す人がこの世にはいる。
椅子は減価償却でいずれ粗大ごみとなる消耗品。
それに10万。ありえない。
ここでお値段以上な買い物をすることは簡単だったけども、
10万に一度座ってその恩恵を確かめたい。
こんな機会そうそうないもの。
椅子に興味を持つなんてさ。
そう思った。
シナリオにも通ずるが、自分で試さずして人様を情弱呼ばわりするのは愚か者のすることだ。
しっかり取材をし、己とすり合わせて偏見に囚われない答えを導き出す。
それが脚本家の心得である。
早速高級椅子を試座出来るショールームを調べてみた。
大体が予約制。
基本高い買い物なだけに、来店時には相応の待遇が待っているらしい。
購買意欲がない自分なんかが予約するのは迷惑この上なかった。
試座だけしたい
たったそれだけのために全力営業されちゃ、いくらお客様至上主義日本でも些か心苦しい。
ううむ……。
しかし、広い東京。
どんな顧客にも受け皿は用意されているらしく、
新宿にある大○家具は予約なしでそれら高級チェアを試座出来る環境にあるとの情報を手に入れた。
僕みたいな貧乏客でも気軽に試座しに来いよ的な、聖母みを感じる。
まあ迷惑に変わりはないが……。
これで有名どころの椅子を一通り試座出来る。
まず買わないけど、最高だった。
ありがとう大○家具。プロになったら家具は大○家具で揃えます。
……。
新宿に来るのは久しぶりだった。
だって来る理由がないんだもの。
田舎出身の僕は例に漏れず、人混みが嫌いだ。
新宿なんて場所は駅の構造から既に毛根が数本殺られる。
それでも高級椅子にタダで座れる。
この体験に勝るものはなかった。
いざ、
試座!
……。
違いが分からなかった。
ごめん、本当に分からない。
2万5000円よりちょっと楽かなとは思う。
でもこれプラシーボ的なやつ働いてね?と思えるくらい大差ない。
アーロンチェアでもオカムラでもエルゴヒューマンでも、革命は起こらなかった。
椅子はどこまでいってもただの椅子。
お値段以上にするか。
ニ○リにワープして試座する。
うん、これで十分だ。
これで……。
……釈然としない。
納得している自分と、モヤモヤしている自分がいる。
うーん……。
僕はプロの脚本家を目指している。
たとえこの先コンクールに落ち続けても10年、いや、20年だって描き続けているだろう。
才も運もない人間が懸けられるのは、時間だけだから……。
そしてその10年。
脚本家にとってパソコンは勿論、机や椅子も常に相棒となる。
2万5000円、果たしてこれで相棒を買っていいのだろうか。
椅子ならプロになった後だって長く使うはずだ。
腰は限界である。
モヤ付きが晴れるまで、時間を作っては大○家具とニ○リの往復をした。
1ヶ月にも及ぶモラトリアム期間。
そして……
ドーン
(CCレモンは比較用。箱デカ過ぎドラえもんサイズ)
買っちまった。
人生で5番目に高い買い物。(13万2000円)
車>時計>車>パソコン>そして椅子。
箱の主張で察しだが、エルゴヒューマンを購入した。
1ヶ月試座し続け、素材も色にもこだわった。
僕の10年を見越した相棒はこいつである。
正直、13万の価値があるとは今でも思っていない。
頭の悪い買い物をした気がする。
だってニ○リの2万5000円で十分満足してたもの。
だったらよ、
13万の価値があった椅子にしてやろうじゃねえか
『13万の椅子に見合う脚本家に必ずなる』
そういう想いが決定打だった。
逃げない甘えない。
宣誓。
これから10年間、僕はシナリオと真摯に向き合います!
頷き、落とし込む。
そのための高級チェア購入だった。
ちなみに横にあるのは大○家具で買ったそれなりのカーペットである。
1ヶ月通い詰めたこともあり、営業さんにお世話になりました的な想いを込めて購入に至った。
もう本当にありがとう。
よーし、
やるぞおおお!!!
6月は忙しくなる。
今月は早速13万に見合う作品を完成させる。
狙うのは大賞だけど!!
写真は完成図
箱から部品を取り出して、組み立てる。
かなり時間が掛かった。
象は友情出演である。
椅子とカーペットの購入からウキウキ気分で新宿でUFOキャッチャーしてゲットした。
500円で取れてラッキー。
験担ぎに自分より先に座らせた。
これからはこの椅子と共に頑張る。
机は後日ニ○リで購入。
大○家具で机を買うには予算が厳しすぎた。
ていうか椅子だけで予算オーバー。
脚本家目指すのもお金かかるな……ハハ。涙