【お通夜編】の続き。
おばあちゃんとお別れの日。告別式。
喪服をビシッと決めて自分なりに格好良い姿でおばあちゃんをお見送りする。
いっぱい泣いたし最後くらい笑顔で送り届けてあげようなんてドラマ染みたことを考えながら親族席へ。
何だろうな。
籍を抜いて家族と戸籍上では無縁になってしまったから親族席って書かれるとどこか寂しいものを感じる。
僧侶が入ってきて読経が始まって……
僕は涙が止まりませんでした。
上を向けば大丈夫とかそういう次元じゃなかった。
周りはすごく落ち着いていて、いや、少しは泣いていたかな。
そんな中、僕は嗚咽が出そうなくらいの号泣。
決して誰よりも悲しかったわけじゃない。
きっと母の方が僕の数倍は悲しんでいるはず。
僕はただ、悲しさもあったけど、悔しさと情けなさもあって涙が止まらなかった。
もし僕が脚本家のプロになっていてテレビで作品が放送されていたら、おばあちゃんは見てくれていたのかな。
そんなことを思うと今の現状が辛くて情けなくて、後悔だらけだった。
読経も終わり、最後のお別れの時。
棺の中に鶴やお花を入れるのだけど、係の人にいっぱい渡された。
みんな1~2回くらいのところ、僕だけ5回くらい入れたんじゃないかな。ひどく泣いていたからだと思う。
正直、綺麗に入れられる余裕がなくて他の人に任せたかったけれど、何て言うかな。
係の人の気遣いとおばあちゃんへの感謝がぶわああってなって、ありがとう、ありがとうって気持ちを込めて1個ずつ入れていった。
偶然か分からないけれど、僕の入れたオレンジの鶴と同じ色の鶴を義父が入れていた時、義父を赦してあげようと思った。
係の人が
「これで本当に最後のお別れですので、ぜひ顔を触ってあげてください」
と言った時、母が泣きながらおばあちゃんの顔をいっぱい触ってあげていた。
他の人はみんな触ってあげていなくて、僕も全く動けなかった。
触ってあげたかったのに動けなかった。自分でもよく分からない。
棺の蓋が閉まる時、少しだけ体が動いたから滑り込んでおばあちゃんの頭を撫でた。
あれだけ動かなかった体が、なぜか母を想った瞬間に動けた。
母に対するフォローだったのかな。おばあちゃんを想う人はいるよって。
ここで動けた自分が好きになれた。
こうやって僕の人生で初めての告別式は終わった。
お通夜に間に合わなかったのは悔やまれるけど、告別式だけでも参加できて良かったと心の底から思う。
告別式は故人が主役ではあるけども、遺族のためにあるものだとどこかで聞いたことがある。
これはその通りで、僕は実際にすごく救われた。
おばあちゃんにありがとうって、きっと一生感謝して生きていくと思うんだ。
人の命の力ってすごいな。
告別式の後、火葬場に向かうとのことで、
写真やら骨壺やら、親族が運ばなきゃいけないものがあるらしく、僕は骨壺を持つことに。
籍を抜いた自分が家族と共に歩く。
何だかこの一瞬だけ昔の家族に戻れた気がした。
移動の車では僕はずっと泣いていて、家族間でも特に話はしていなかった。
火葬場では火葬が淡々と進んでいって、気付けばおばあちゃんは骨になっていた。
人の骨を見るのは初めてで、こんなカルシウムの塊みたいになるんだと変なことを思った。
骨拾いの時、遺骨の中に燃え残ったペースメーカーがあって、
どうやら心臓の弱かったおばあちゃんが常につけていたものみたい。
みんな物珍しそうに見ていた。
母に聞くとペースメーカーは骨壺には入れずに捨てるとのことだったので無理を言って貰ってきた。
みんな「えぇ?」って感じで少し引いている感じだったけども、
おばあちゃんとの思い出や貰ったものを忘れたくなかった想いと、
おばあちゃんに迷惑かけてばかりだった弱い自分への戒めから、持っていたかった。
さて、もう後は飛行機で帰るだけ。
でも遅くなっちゃったから帰りの飛行機はもうなくて、母の意向もあって久しぶりに実家で寝ることに。
表札に書かれた文字がどこか懐かしくて、そして寂しくもあったかな。
この日は昔の自分の部屋で寝ることになった。
葬儀場で他人行儀であった義父。
籍を抜いて他人となったことで適度な距離もできて逆に打ち解けられるかなと詰め寄ってみたけれど、面と向かって舌打ちされて終わった。
義父の僕に対する想いは何も変わっていなかった。
でも葬儀場で再会した義父は良い人で、僕を抜いた家族はすごく団結した良い家族に見えたんだよね。
だから僕がいなければもっと良い家庭だったんじゃないか……そう思うと胸が苦しくなった。
義父の唯一の欠点は
「僕のことが嫌いなこと」
これだけなんだ。
きっと誰も悪くない。人の好き嫌いくらい誰だってあるよ。
【僕がいなければ家族は団結できる】
この事実を頭では分かっているけどどこかで認めたくなくて、
ここで家族に割って入って喧嘩になったらと思うといよいよもう立ち直れないんじゃないかって……。
だから夕飯は自室で一人で食べることにした。
今思うと現実を受け入れたくなかったのかもしれない。
それでも帰省して尚、自室で一人で夕飯を食べる自分が悲しくて、この家は懐かしくもあるけど僕にとっては辛い家。
涙が止まらなかった。
もう帰らないぞ、そう誓った。
今回の帰省では出来ることならおばあちゃんのことだけで泣きたかったな。
そんな幾重もの悲しみの中、本当の父親から電話があった。
おばあちゃんの件で僕が帰省していることをどこからか聞きつけたらしい。
この実父とは20を超えてから連絡を取り始めた。
僕の父親は良くも悪くも自分勝手で気ままで、まぁ僕の父親なんだろうなって父親だ。
「よう!帰ってきてんだってな!飲み行こうぜ!」
電話はそんな内容だった。
おばあちゃんが亡くなったばかりなのに飲み……。
父はもちろん事情を全て知っている。
当然ながら断った。
ちなみに次の日はパチスロに誘ってきた。
ひどく不愉快で、むかつく。
血縁というものだけでは家族は一つになれない。
血縁で悩み苦しんできた自分が、ずっと求め、20歳を超えてやっと得た血縁から学んだものはそういう虚しい答えだけ。
僕の家族は残り本当に少ない。
【決意編】に続く。
※文章がシッチャカメッチャカですみません。
この日は本当に色々あって、もっと話の要点とか絞れたら良かったのかもしれないんですけど、
一つ一つ全部記録していたかったんです。この日のことを忘れちゃいけないと思って……。
次の【決意編】でラストです。
シナリオ関係ない話を長々とすみません。