雑記 脚本の技術

バスに乗ってたおじさんを想う

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夕方。図書館の帰り道。

右手には手提げ袋に入った数冊の本。

帰りのバスに乗る。車内には何人かの乗客。

二人用席の窓際に小さく座る。

アナウンス「発車します」

バスのドアが閉まる。

腕を窓枠にかけ、窓の外を見る。

帰宅途中であろう小学生たち。夕日が良く映える。

ふろゆ「はぁ……」

楽しそうな彼らを見て、なぜか大きなため息が出る。

ふと通路を挟んで斜め前に座っている初老くらいだろうか、おじさんを見る。

彼も大きなため息を吐いた。

仕事帰りかな?疲れた表情をしてるな。

髪が薄い。なかなか着古したスーツ。

絵に描いたようなおじさん。

そんなおじさんを眺めていたら自然と涙が出てきた。

 

みたいなことがあったんですよ。

結構な量の涙が出て、傍から見て変なやつだったと思う。

一人で涙拭ってた。

他の乗客に気づかれないよう伏し目がちに窓の方を見てた。

誰にも声かけられなくて良かった。

声かけられていたとしたら……。

どう説明すればいいんだ。

「あ、あのですね。あそこのおじさんを見ていたらセンチメンタルな気持ちに……」

とか言った日には、もれなく変人誕生だ。

なんかね、おじさん眺めていたら勝手におじさんの人生像を想像しちゃって……。

おじさんに対して、

今日は仕事大変だったんだろうなぁ。とか、

家族の生活のために謝りたくもない場所で謝ってたりするのかな。とか、

息子や娘は何歳くらいでどんな風に家で接しているんだろう。とか、

おじさんの夢や生きがいって何なんだろう、やっぱり家族?とか、

他にも色々考えてたんだけど、忘れた。

もうそんなこと考えていたら夕日が目に沁みたのもあって涙ボロボロ。

おじさんのバックボーンに自分を重ねるにしては歳が離れすぎているし、

あの時どんな感情で泣いていたのか今となっては分からない。

でも、不思議とジーンと来てしまったんですよね。

 

10代の頃に比べてだいぶ涙もろくなってきたなぁと感じる今日この頃。

物事に対して一つ一つと思い当たる節を年を経て色々と経験してきたからだと思う。

見る景色の一つ一つが過去と重なる。

デジャヴ?ちょっと違う。

20代の僕がそう思うのだから30代、40代、もっと年上の人が

「年をとって涙もろくなったよ」

と言うのは涙腺が弱くなったとか表情筋が衰えたとかそういう単純な理由じゃなくて、

それだけの人生を歩んできたからなんだろうなぁ。と勝手に結論付けてる。

もし違っていたら、ごめんなさい。

 

「涙の理由」って言葉よくあるけど、

僕が今日流した涙に言葉で説明できる理由はない。

決しておじさんに共感したわけでも同情したわけでもない。

そもそもおじさんの事情なんて全く知らない。会ったばかりだし。

それでも勝手に出た涙。

誰でも経験あるんじゃないかな。

家で独り、横になった時とか、自然と出る涙。とか。

決して眠いわけじゃないですよ。あくびの時に出る涙とは別のものです。

頬を触って涙が触れて、あれ?泣いてる……。ってなりません?

この涙って、すっごく不思議で感動的なものな気がするんですよね。

目標が達成できて嬉しい

期待に沿えなくて悔しい

彼女を悲しませて悲しい

そんな普遍的な涙に価値がないわけは絶対にないけれど。

実際にドラマはそれで溢れてます。感動するし、泣けるし。

でも、プロの脚本家になるなら今回の涙もまた、無視はできない。

僕が今日流した涙、書いて表現してみたい。

書けるようになったら1ランクどころか2ランク、3ランク上がれる気がする。

「あの作品なんなんだろうね。わけわからない涙出てくるわ」

そんなことを言われる作品ってすごくないですか。

理屈じゃ語れない涙。

書いてみたい!書いて映像で見てみたい。

願わくば作るところまで関わっていきたい。

この技術を視聴者に届けるには脚本家だけじゃなく、

プロデューサーさんや制作チーム(監督さんや演出さんetc)や役者さんの協力も必要不可欠だと思う。

そこまで考えると制作もなるたけ携わっていきたい。欲張りかな。

脚本家がそこまで入れるかって言われたら、それはプロになっても難しいことだと思うけれども……。

泣ける脚本を書くぞーって意気込んで、

泣けるシーンや感動できるシチュエーションを計算して書く。

それを見て、きっと視聴者は泣いてくれる。

でもそんな方法じゃ絶対に再現できない涙だからこそ、この涙には挑戦してみたい。

長くなったけれども以上が疲れてたおじさんの背中を見て泣いたことに対し、想ったこと、考えたことでした。

夢が一つ増えた、かな。


 

今はこの涙を再現できる書き方が分からないから頑張るしかない。

脚本家としてのスキルを上げていくしかない。

おじさんの背中から想ったこの感情や夢を叶えられるステージまで走り続けなきゃ。

おじさんも頑張って。

僕も頑張るよ。

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